犬の肉球は、そのかわいらしい見た目だけでなく、犬の健康維持や快適な生活に重要な役割を果たしています。
しかし、そのための機能を保つためには、適切なケアが欠かせません。
この記事では、犬の肉球の役割やケア方法などについて詳しく解説します。
愛犬の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。
まずはじめに、犬の肉球の基礎的な知識から説明していきます。
犬の肉球は「前脚」と「後脚」で異なるパーツから構成されています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
前脚の肉球は以下のパーツから構成されてます。
掌球(しょうきゅう):中心にある大きな肉球
手根球(しゅこんきゅう):狼爪の少し下にある1つの肉球
指球(しきゅう):爪のすぐ下にある5つの小さな肉球
後脚の肉球は以下のパーツから構成されてます。
足底球(そくていきゅう):中心にある大きな肉球
趾球(しきゅう):爪のすぐ下にある4つの小さな肉球
犬の足跡を見ると、前足も後ろ足も同じように見えることがありますが、実際にはそれぞれ異なる肉球が足先に集中しています。
犬の肉球の色はメラニン色素によって決まります。
子犬の頃はピンク色ですが、成長すると黒くなることが多いです。
ただし、遺伝による影響も大きく、子犬の時から黒い肉球を持つ犬や、成犬になってもピンクのままの犬もいます。
犬の肉球の硬さは年齢や生活環境によって異なります。生まれたての子犬は柔らかい肉球を持ち、成長と共に硬くなります。室内で育つ犬は柔らかい肉球のままですが、外で過ごす犬や散歩の多い犬は硬い肉球になります。
肉球には骨があり、その骨に沿って腱、靭帯、血管、結合組織が形成されています。
肉球は、ハニカム構造と呼ばれる正六角形や正六角柱が隙間なく並んだ形状で、外側は硬い角質化した皮膚、内側は脂肪と繊維組織からなる弾力のある繊維でできています。
表面には円錐状の突起があり、滑り止めやブレーキの役割を果たしています。
犬の肉球は、その構造と機能から犬の健康と快適な生活に欠かせない部分です。
適切なケアとチェックを行い、トラブルを未然に防ぎましょう。
犬の肉球は、以下のような役割を果たしています。
体温調節
衝撃吸収
温度感知
それぞれ詳しく説明していきます。
犬の汗腺は鼻の頭と肉球にしか存在せず、体温調節のためにパンティング(舌を出してハァハァする)と共に肉球から汗をかきます。
これにより、体温が上昇しすぎるのを防いでいます。
肉球は、犬が歩く際に全体重を支え、靴の役割を果たします。
特に、肉球の真ん中の大きな掌球と4つの指球は、飛び跳ねたり走ったりする際に足の関節や骨にかかる衝撃を吸収するクッションの役目を果たしています。
また、肉球の厚い角質層と柔らかい脂肪組織により、地面からの冷たさや熱を感じにくく、多少温度が高い場所でも火傷をせずに歩くことができます。
肉球の表面は発達した乳頭という突起状の構造で覆われています。
このでこぼこのおかげで地面との摩擦が生じ、犬は急に止まったり方向転換したりすることが可能です。
犬の肉球は、敏感に温度の変化を感じ取ることができますが、暑いと感じても自分で回避することはできません。
そのため、飼い主が散歩の時間帯や歩く場所に気を付ける必要があります。
また、常に外で飼われていたり、外での運動量が多い犬は肉球の皮膚が厚くなり、寒い地域出身の犬は肉球間の毛が密に生えるため、地面の熱さや雪の冷たさをしのげるようになっています。
犬の肉球は様々なトラブルの原因となることがあります。
ここでは、主なトラブルとその対処法について説明します。
夏のアスファルトや砂浜は非常に高温になるため、犬の肉球が火傷することがあります。
軽い火傷の場合は、水や保冷剤をタオルに包んで冷やすとよいでしょう。
肉球が黒ずんだり真っ赤になったり、水ぶくれができたりしている場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
肉球は地面に直接接するため、切り傷が発生しやすいです。
夏のアスファルトや冬場の融雪剤に注意し、公園などではノギなどの草の実が刺さることがあります。
お散歩の後、肉球をなめるような行動が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。
硬い地面を歩くことが多い犬や、乾燥する時期には、肉球が乾燥してひび割れることがあります。
痛みやかゆみを伴うことがあるため、定期的にチェックしてあげることが重要です。
犬が頻繁に指の間や肉球を舐めている場合、指間炎の可能性があります。
指の間が傷ついたり濡れたまま放置すると、炎症を引き起こすことがあります。
足の裏を清潔に保ち、濡れたままにしないようにしましょう。
炎症が見られる場合は、動物病院で治療を受けることが必要です。
肉球や指間に腫瘍ができることがあります。
犬が肉球を頻繁に舐める、血が出る、化膿する、腫れるなどの症状が見られる場合は、早期に動物病院で診察を受けることが重要です。
犬ジステンパーウイルスによる感染症で、非常に感染力が高く、致死率も高い怖い病気です。
このウイルスはヒトの麻疹(はしか)とよく似ており、感染すると50〜90%の犬が死亡します。
また、回復しても後遺症が残ることがあり、特に子犬の命を脅かす危険な病気です。
感染すると、肉球や鼻の皮膚が硬くなる「ハードパット」などの症状が現れます。
この病気を予防するためには、定期的なワクチン接種が必要です。
アレルギー疾患により、指間や肉球がかゆくなり、犬が頻繁に舐めることがあります。
症状が見られる場合は、動物病院で抗ヒスタミン薬やステロイド薬の治療を受けることが必要です。
肉球のトラブルを防ぐためには、定期的にチェックし、異変があれば早めに対処することが重要です。
犬の肉球を健康に保つためには、飼い主によるケアが大切です。
意識するべきことを以下にまとめました。
適切な洗浄方法で清潔に保つ
適切な製品を使用する
保湿
肉球のマッサージ
適切な散歩の時間と装備
肉球の被毛ケア
それぞれ詳しく説明していきます。
肉球が乾燥している場合は、2〜3日に1回洗うことを目安にし、洗わない日はぬるま湯に浸したタオルで拭くと良いです。
濡れたままにせず、しっかり乾かしましょう。
このように、お散歩の後には手足を拭くか洗って清潔にしましょう。
犬の皮膚は人間よりも薄いため、人用のシャンプーや塗り薬は使用せず、必ず犬専用のものを使うようにしましょう。
特に指間炎を防ぐためには、定期的に薬用シャンプーで洗うことが効果的です。
乾燥は肉球のトラブルを引き起こす原因となります。
専用の保湿クリームを少量ずつ薄く塗ることで、肉球をしっかり保護しましょう。
頻繁に塗りすぎると犬が足の感触に不快感を覚えることがあるので注意が必要です。
肉球マッサージは血行促進やリラックス効果、怪我や病気の早期発見にも役立つため、定期的に行うと良いでしょう。
肉球マッサージの方法として、以下の手順を参考に行いましょう。
水で指先を少しだけ濡らし、犬の肉球を優しく撫でます。
手の温度で少し温めた犬専用の肉球クリームを用意しましょう。
肉球にクリームを塗ります。
親指で肉球を広げるように優しく撫でながらクリームを塗りこみます。
両手の親指で肉球を広げるようにしながらクリームをマッサージし、肉球と肉球の間も忘れずに丁寧になじませます。
肉球と肉球の間をやさしく揉みましょう。
肉球の手根球の下にあるくぼんだ部分、神門(しんもん)と呼ばれるツボを押してあげるとリラックス効果が高まります。
最後に足全体を手の平で包み込むように軽く握ります。
このマッサージを1週間続けるだけでも、肉球のハリが良くなっているのを実感できます。
初めは時間がかかるかもしれませんが、続けることで愛犬もリラックスして受け入れてくれるようになりますので、継続して行ってみてください。
アトピー性皮膚炎の犬には、洋服や靴を履かせてアレルゲンを防ぎましょう。
真夏や真冬には散歩の時間やコースを調整し、暑さ寒さを避けるようにしましょう。
必要に応じて靴を履かせるのも効果的です。
肉球の間の被毛が長くなってしまうと滑りやすくなるため、定期的にカットしてあげましょう。
肉球のケアは、愛犬の健康維持に欠かせません。
もしも愛犬が肉球ケアを嫌がる場合は、プロに任せることも検討してください。
犬の肉球は、体温調節、衝撃吸収、方向転換、温度感知など、犬の健康と快適な生活に重要な役割を果たしています。
犬の肉球トラブルを防ぐには、適切な散歩時間やケア、保湿クリームの使用、マッサージを行うことが効果的です。
乾燥した犬の肉球には、専用の保湿クリームを薄く塗り、定期的にマッサージを行い、保湿を心がけることが大切です。
犬の肉球は、衝撃吸収や体温調節、地面からの保護など、さまざまな役割を担っています。
しかし、肉球は火傷や乾燥、指間炎などのトラブルに見舞われやすい部分でもあります。
これらのトラブルを防ぎ、愛犬の健康を保つためには、定期的なチェックと適切なケアが欠かせません。
散歩後の足洗いや保湿クリームの使用、マッサージなどを行うことで、肉球を健やかに保つことができます。
愛犬の肉球を大切にケアして、快適な生活をサポートしましょう。