フィラリア症は、犬の健康を脅かす深刻な病気で、主に蚊を媒介にして感染します。
この寄生虫が体内に入り込むと、初期にはほとんど症状が見られないため、見過ごされがちです。
しかし、時間が経つにつれて心臓や肺に大きな負担をかけ、咳や元気の低下など、さまざまな症状が現れ始めます。
本記事では、フィラリア症の具体的な症状や影響などについて詳しく解説していきます。
フィラリア症は、犬の体内に寄生するイヌフィラリアという寄生虫が原因で、心臓や肺の動脈に寄生し、犬の健康を脅かす非常に危険な病気です。
この病気は、蚊が感染した犬の血液を吸うことで始まります。
蚊が吸血する際に、犬の血液中にいるミクロフィラリアという幼虫が蚊の体内に取り込まれます。
蚊の体内で成長した幼虫は、再び別の犬を吸血する際にその犬の体内に侵入し、感染が広がっていくのです。
フィラリア症は一度発症すると治療が難しく、肺や心臓に与えたダメージは回復しません。
そのため、治療よりも予防が非常に重要な病気です。
フィラリアは、蚊を媒介にして犬や猫に感染する寄生虫です。
蚊がフィラリアに感染した動物の血を吸う際、その血液中に含まれるミクロフィラリア(フィラリアの幼虫)も一緒に蚊の体内に取り込まれます。
このミクロフィラリアは蚊の体内で約14日間で感染力を持つ幼虫に成長し、成長した幼虫を持った蚊が別の動物を刺すと、幼虫がその動物の体内に侵入し、やがて成虫になります。
フィラリアは一度体内に侵入すると、数年間にわたって住みつくことがあり、その間に肺や血管にダメージを与え、時間をかけてじわじわと症状が進行し、最終的に目に見える形で発症するのです。
①蚊がフィラリアに感染した動物の血を吸い、幼虫を体内に取り込む。
②その蚊が別の動物を刺し、幼虫が新しい宿主の体内に入り込む。
③体内に入った幼虫は約6ヶ月かけて成虫に成長し、心臓や肺動脈に寄生しながら新たな幼虫を生む。
こうして感染が繰り返され、フィラリア症が広がっていきます。
感染が進むと、成虫は犬の心臓や肺に寄生し、深刻な健康被害を引き起こします。
そのため、フィラリア症は予防が非常に重要です。
初期段階では、多くの場合目立った症状はほとんどありません。
しかし、病気が進行して中期に入ると、幼虫が心臓内で成長し、血流を妨げたり、心臓の弁を傷つけたりすることで、咳が出たり、歩くのを嫌がる、元気がなくなる、息が荒くなるなど、心不全に近い症状が現れ始めます。
さらに進行して末期になると、腹水がたまる、血尿が出る、四肢がむくむ、吐血、呼吸困難など深刻な症状が現れ、放置すると命に関わることがあります。
特に急性フィラリア症を発症した場合は、呼吸が苦しそうになったり、食欲を失ったり、血尿が出るなどのショック状態に陥り、助かる可能性が非常に低くなるので注意が必要です。
フィラリアの症状は、以下のように進行します。
以下、軽度の代表的な症状です。
無症状が多い
咳
以下、中程度の代表的な症状です。
咳
運動を嫌がる、疲れやすい
肺音に異常が出る
以下、重度の代表的な症状です。
咳
運動を極端に嫌がる
呼吸困難
心音や肺音の異常
腹水がたまる
皮膚に湿疹が出る
フィラリア症は早期発見と予防が非常に重要であり、定期的に予防薬を使用することが最も効果的と言われています。
蚊に刺されて体内に入ったフィラリアの幼虫を駆除し、成虫になるのを防ぐために予防薬が重要となります。
蚊取り線香や蚊よけも補助的に使用できますが、予防効果は不確実なため、必ず予防薬を与えるようにしましょう。
フィラリア症を予防するための薬にはさまざまな種類があり、犬の体質や生活スタイルに合ったものを選ぶことができます。
予防薬の種類としては、毎月1回の投薬で効果を発揮するものから、1年間の効果が持続する注射までさまざまです。
薬の形状もおやつタイプや滴下タイプなど、犬の好みに合わせて選ぶことができます。
もし予防薬の使用に不安がある場合は、動物病院で相談してみてください。
フィラリア症予防の期間は、蚊が活動し始める1カ月後から、蚊がいなくなった1カ月後までが目安です。
地域によって多少異なりますが、関東地方では5月から12月ごろまでが予防期間となります。
フィラリア症を防ぐためには、薬の種類に関わらず、定期的に投薬を続けることが大切です。
投薬忘れや自己判断での使用は避け、常に獣医師の指導を受けて予防を行いましょう。
フィラリア陽性と診断された場合、適切な治療を行いながら生活していくことが重要です。
治療を続けることで、陽性から陰性に転じることもあります。
外科手術は、心臓や血管に寄生している成虫を直接取り除く方法です。
この治療法は、症状が重く、かつ全身麻酔に耐えられる体力がある犬にのみ適用されます。
治療期間は比較的短いですが、手術費用がかかり、リスクも伴います。
ボルバキアというフィラリアと共生する細菌を抗生剤で除去する方法です。
この治療により、フィラリアの繁殖を抑えたり、成虫を死滅させることが可能です。
ただし、治療期間は約1〜3年と長期にわたります。
成虫が自然に寿命を迎えるまで待つ方法です。
この間、ミクロフィラリア(フィラリアの幼虫)を予防薬で駆除し、成虫が増えないように管理します。
治療期間は5〜6年と長く、その間、月に一度の薬の投与が必要です。
成虫を駆除するための薬を投与する方法ですが、現在の日本では入手困難であり、使用時のリスクも高いため、一般的には推奨されていません。
治療期間は数カ月から1年半以上かかることもあります。
フィラリア陽性の犬は、心臓や肺に負担をかけないよう、激しい運動や興奮を避ける必要があります。
適度な散歩は推奨されますが、肥満やストレスを避けるためにも、適切な運動が重要です。
フィラリア症の治療には長期間の管理が必要ですが、飼い主さんと獣医師が連携し、適切な治療とケアを行うことで、愛犬の健康を維持することができます。
犬のフィラリア症は初期にはほとんど症状が現れないことが多いですが、進行すると咳や元気の低下などが見られます。
フィラリア症を予防するためには、定期的な予防薬の投与が必要です。また、蚊に刺されないようにすることも重要です。
フィラリア症の治療には外科手術やボルバキア治療、成虫駆除薬の投与などがありますが、予防が最も重要です。
フィラリア症は、犬にとって非常に危険な病気です。
フィラリアという病原体が原因で犬の心臓や肺に寄生し、初期段階ではほとんど症状が見られないことが多いですが、進行するにつれて咳や運動を嫌がるなどの症状が現れ、さらに悪化すると呼吸困難や心不全といった命に関わる深刻な状態に至ることもあります。
このようなリスクを避けるためには、フィラリア症の予防が欠かせません。
特に、フィラリアの症状は進行してから気づくことが多いため、定期的な検査や予防薬の投与が非常に重要です。
愛犬の健康を守るためにも、フィラリア症の予防と早期発見を心がけ、少しでも異常を感じた場合は、すぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。